義足製作からリハビリまで

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1. 義足を作る手続きとその流れ(制度の問題点も)

@. 義足はどうやって作るのか、買うのか?
 
まず、仮義足という練習用の義足を作ります
そして、切断部分が安定したら、本義足を作ります
 

さてどういう手続きで作るのでしょう?

今の日本はこの辺のサポートが不十分です。最近はソーシャルワーカーという人がいますが、その人もあまり手助けしてくれません。装具士さんだけが頼りです。

事故の状況によって手続きが違います。具体的には、

 
@ 自爆事故や病気で切断した場合

A 仕事中の事故で労災扱いの場合

B 事故にあった場合(相手の保険で作る)/自腹で義足を買えるお金持ちの場合
 

主にこのような3つのパターンがあるようですが、各パターンで、作る手順、お金の支払い方法、作れる義足の種類や数が異なってきます。しかも、@の場合は、地方によっても違ってきます。

@ 自爆事故や病気で切断した場合

この場合、身体障害者福祉法に基づいて、市町村から交付を受ける事ができるようです。これが、皆さんがよく言う、「手帳で作る」や「福祉で作る」ということみたいですね。

担当の装具士さんに聞けば手順を教えてもらえるはずです。

最初の仮義足を、手帳で作る人と健康保険で作る人がいるようで、一貫してない感じ。

以下、掲示板に投稿いただいた情報( いずおっちさん、ダッピーさん、jun1さん投稿より)をもとにまとめてみました。

***

実際は、次のような手順になります。

 
1. 医療訓練用として仮義足を作成 [健康保険など]
2. 身体障害者手帳の申請・取得
3. 本義足の作成手続き開始
 

まず、入院中に医療訓練用として仮義足を作ります。仮義足の作成については、健康保険などで医療費を自己負担する場合が多いようです。

次に、歩行訓練をします。最初は平行棒の中での練習から始まって、松葉杖だけで歩けるところまで練習するのが一般的ですね。

その後、退院となります。

本義足は、退院後に障害者手帳が届いてから作成するものです。一般的には切断から1年ぐらい経ってから製作します。約1年間、切断部分がどんどん痩せ続けて形が変わるので、安定するまで待ちます。

一度作ったら、最低3年は同じものを使うことになるので、本義足製は慎重に。障害者手帳ができると福祉(みんな福祉っていう)にて、義足代をいくらか補助してもらえます。

簡単に書くと、仮義足では、1〜3割負担みたい。1本50万円ぐらいだから、最初全額立替は影響大。 本義足は100万円ぐらい。立て替えは不要ですが、3割の負担となると、それなりの負担になりますので慎重にパーツ選びが必要ですね。・・・その後法律改正があったので、支払い方法が変わっているかもしれません(2008年追記)。

手帳を使って作る場合は、厚生労働省が認可した義足しか使えません。

ここで引用したjun1さんの情報を掲載します。

  仮義足は、交通事故や労災の場合は知りませんが、僕は健康保険で作りました。本人3割ですから、僕の場合は実費100万円程度の義足に対し、30万円程度を払いました。治療用義足として位置付けられているので当然っちゃ当然ですが、痛い出費でした。
なので、健保で作るなら自立支援法とは関係ないかもしれませんね。
今になって思えば、負担額が大きいからこそ、仮義足の段階では価格の安いパーツを使うことを薦められたのかしれないなってことに、ハタと気づきました。

その後の更新についても情報をいただきました(ダッピーさん、jun1さん)

健康保険を使用した場合は一般医療負担と同様の3割負担です。労災は負担無しのようですが、一般的なケースだと仮義足は実費の3割と考えればいいのではないでしょうか。ですから、費用負担を苦にされる場合、あえて安いパーツを組み合わせることで抑える方もいるようです。私見としては最初から妥協しない方が良いと思いますが。
あと、手帳での更新時期についてですが、最も長いパイプの対応年数5年を無視すれば3年で原則的には1本新調可能です。また、ソケットの更新については制限が無く、フォームカバーも半年で更新可です。
だから、更新期間は、
義足一式 : 3年(パイプのみ実費)
ソケット : 期間制限無し
フォームカバー : 半年
となります。

A 仕事中の事故で労災扱いの場合(僕の場合)

労災保険で全額負担です。

仮義足のあたりの記憶がないのですが(そのうち調べます)、最初に社会保険事務所に行って必要な申請を行い、次に、どういう訳か労働基準監督署にもう一度行って申請しました。

労災保険の場合、自己負担が無いので安心ですが、労災保険も、@と同様、厚生労働省が認可した義足しか作れません。

ちなみに、本義足の作成の手順は、

 
1. 労働基準監督署に申請〜承認
2. 義肢製作所に見積り書を作ってもらう(パーツを決める)
3. 製作許可が下りたら、製作開始
4. 完成したら、労働基準監督署に義足を見せに行って検収
5. 検収が終わるとようやく義肢製作所がお金を受け取れる
 

という流れ。
しかし・・・お役所の皆さん、もっと親切な対応をお願いします。
慣れない義足で、事務所や病院の間を何度往復させられた事か。
今、目の前に来た人に対して、自分の知り合いと同じように親切に対応してますか!

切断者の皆さん、我々に知らされてない制度があるかもしれません。えっ、そんなことにもお金が出るの?そんなことがあり得ます。
気になったら、遠慮せずに、聞きましょう!


B 事故にあった場合(相手の保険で作る)/自腹で義足を買えるお金持ちの場合

@やAとの違いは、使える部品に制限が無いというところ。手続きも簡単かも知れません。詳しく調べてなくてすみません。



A. 製作の流れ
 
 

残った部分の足の長さ太さをメジャーテープで測定します。

断端の型を石膏でとります。
健側(けんそく:反対の足)の太さや長さ、膝の位置なども測定。
相談しながら使うパーツを検討(最初は分からないからお任せ?)

ここで義足ができあがりますが、試着して、痛いところがないか確認。
※ 痛くなくなるまで、仮あわせを繰り返す。問題はソケットです。

目処が立ったら、本格的な素材を使ってソケットを作成し仕上げます。
※多少の手直しをして完成
 
 
B. リハビリ

非常に狭い視野での経験談ですが、

 
切断手術
断端のケアと義足装着までのリハビリ
義足製作
義足歩行訓練
 

この流れの中で、最後の4段階になると、整形外科の先生、理学療法士さん、義肢装具士さん、その3者のだれの役割なのかがはっきりしていません。

そのため、せっかく良い義足が支給されても、正しく装着されず、しっかり歩行できていない人がいるようです。

わたしより丈夫な身体、丈夫な健側(切断してない方の足のこと)をしていながら、杖無しでは歩けない人に出会ったことがあります。それが一人ではない。

特に、ソケットは、断端を奥の方までしっかりと入れないとだめですよ。自分がきちんと装着できているか装具士さんに見てもらってください。

高齢の方など、体力があまり無い人は別として、普通の人なら、すぐに杖無しで歩けるようになります。

しかし、現実問題、非常に積極的な装具士さんに出会うか、または、患者自身が勉強するか、そのどちらかで無いと、本来設計した通りの義足の機能を生かすことができないことがありそうです。

それが日本の制度の問題点の一つのように思われます。

その解決策としては、義肢装具士さんの役割の拡充、地位向上、労働環境の整備をあげたいと思います。

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2. 義足作成時の心得

@. 地方は不利

いろいろご意見はみなさんあるとは思いますが、私個人の経験からして、地方に住んでいる事は、大腿義足製作においてとっても不利です(そうでない幸せな人もいるようですが)。

そもそも患者数がそれほど多くないところに来て、さらに地方の病院のお世話になっていると、大腿切断者のリハビリ、義足の製作に対して関係者の皆さんに経験があまりありません。

担当の義肢装具士さんが唯一頼りになる人でありますが、その装具士さんもお忙しいので、なかなか十分に時間を割いてもらうわけにもいかず、結局、自分が勉強するしかありませんでした。

特に、ソケットの製作においては、経験がもっとも重要なところ。わずかな情報による、私なりの結論は、大手の義肢製作所にお世話にならないと「何キロでも歩けるソケット」を入手する事は困難ではないかと思っています。

A. 装具士さんとの付き合い方

妥協することなく、痛かったら、痛いと言いましょう。戦後の義足と違い、体を義足を合わせるまでひたすら耐える必要はありません。体にあった義足を設計し、製作する事が義肢装具士さんの役目です。 ← これが基本原則!!

たしかーに、私のように田舎に住んでいると、そう簡単に別の装具士さんを探せるわけでもなく、ついつい仲良くすることを優先してしまいがちですが、また、性格的にも強く言えなかったりするのですが、今はとっても後悔しています。
納得するまでOKと言わないで!とテレビでも言ってました。

過去、このように言いきってくれる人が側にいなかったので、「そろそろ義足に身体を合わせててもらわないとね」と言われ、3kg減量し、無理やり合わせて使い始めたのが、最初の本義足のソケットです。ちょっと歩くともう傷が!・・・でもこんなものだと思ってきましたが、大きな間違いでした。ディズニーランドを1日中歩きまわっても平気な大腿切断者がいるのですよ。

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3. 装具士さんに言いたいこと

@. 装具士さんのあるべき姿(行動規範)

それなりの義足歴と社会人歴から私が思う装具士さんのあるべき姿について一言。

お忙しいのは分かるけど、切断者に妥協をさせないで欲しい。皆さんは、切断者の QOL に直接的に貢献できるとてもすばらしい仕事についているのです。

技術者として常に最高の仕事を目指し、研究者として向学心を忘れず、かつ一人の人間として倫理観もち、ユーザーの立場に立って、よりよい義足の製作に励んでください。

しかし、皆さんもサラリーマン。社長の立場になって考えましょう。一人のユーザーにいつまでも時間を割いていては経営が成り立ちません。みなさんの会社が儲けてくれないと、結果的にユーザーだって困ります。

だから、いかに短時間で、ベストな義足を製作するか、本気で考えましょう。みんなが切磋琢磨し、腕を磨き、日本の義足製作技術を世界一にしようではありませんか。

切断者にもいろんな人がいるから、コミュニケーションも大変だってことも分かっているつもりです。でも、その辺は、どんな仕事でも同じかも。

余談ですけど、本当の国際人って何かというと。英語を話せたり、外国の事を良く知っている人のことではありません。隣の街、となりの会社、近くの学校、どこに出ても恥ずかしくない大人になること。
同業者に自信を持って見せられるような仕事をしてみませんか。

A. ソケット製作方法の研究を急いで!

[2006/01/29]

これは装具士さんだけでなく関係機関及び関係者全体の問題で、病院、義肢業界、義肢研究者の皆さんへのメッセージです。

膝や足部はかなり進歩したから、ソケットをなんとかして下さい。

スーツのオーダーメイドなら、どのお店で作ったって、大体満足いくものが作れるように、どの病院、どの装具士さんでも、ぴったりくるソケットが簡単に製作できるようなシステムを開発して下さい。

詳しくは、当サイトの「ソケットはなぜ合わない」をご覧になって下さい。

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4. リハビリ体験談

i. 「断端包帯法の代替案」
その1 太もも用サポータ (これは素人案なのでご注意

切断後、断端の形状を整えたりするために、包帯を巻きますが、これが非常に難しい。切断直後はやはり包帯でしょうけど、傷口が安定したら、包帯ではなく、太もも用サポータを使ってはどうでしょう。

サポータをブリーフの下着に縫い付けて使います。(下着を2重に着けることになるのでやや暑い)

包帯は、就寝前に巻きますが、翌朝までしっかり巻かれたままで残っている確率が低い。かなり上手な看護婦さんにしっかり巻いてもらえた場合を除き、目覚めたときにはほとんどほどけてしまっている。つまり、効果は実質的に無い。

そこで、考え出したのがこの方法。これで確実、かつ均等に断端の圧縮が可能になるし、包帯を巻く手間も省ける。

現在リハビリ中の皆さん、整形の先生にご提案を!
わたしの場合、切断後半年以上経ってから使い始めましたので、切断直後に使えるかどうかは実績無し。

その2 シュリンカーソックス (shrinker sock)
[2004.12.13]

自作しなくても売ってました。けど自分自身買ったことはありません。

http://www.waramps.ca/nac/health/phantom.html

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2006.05.15 更新)
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